温暖化はどこ行った? 

 今年もあと少しというところで、数年に一度とかの猛烈な寒波が攻めてきて、年明けてもその勢いが止まらない。ラニーニャの影響だとか。温暖化はどこ行った? 外岩行くには根性がいるがそれでも炬燵でミカンでも食って過ごそうとはならない。インドアジムという手もあるし。

 ここで普遍的な疑問、何故そこまでして登りたいのか?

 飼い主からたんまり餌をもらっているネコもネズミを目にすれば猛然と襲いかかる。食うためではない。血が騒ぐのだ。やったぜ!となれば上機嫌で飼い主に見せに行ったりもする。その「やったぜ!」はクライマーならとても良く理解できる。違うのは、どんな猫でもそんなだけど、クライマーは人間の中では少数派だという点だ。

 ネコは本能でネズミを仕留めようとするが、人間が壁を登りたがるのは本能ではない。何とかと煙は、なんて言われるくらい人間一般の欲望ではなく、ある種の人間だけがそうしたがる。人類がサルだったころへの先祖返りかもしれないが、サルとは違ってサル並みの頭しかないクライマーは上手く登れない(いくらかの例外はあるかもしれないが)。

 なぜ登るのか、その疑問への一つの答えが実生活からの逃亡だというのがよく言われること。確かに生きていくのは誰にとっても大変なことで、上手く世の中を渡っているように見える人だってその内面は分からない。社会になじめず、無理して他人に調子合せ、時には経済的に困窮し、自己嫌悪の中でうつうつと過ごしていても、岩場で、あるいはジムで「やったぜ!」となればまた明日から頑張れる。

 しかしこの説明はチト暗すぎるし分かりやすすぎる。そんなんじゃねえよと、かなりの確信を持って言える。直感的に、そして実感としてそうじゃないというのがまずはあるのだけど、それでは非クライマーは説得されない。やってみればわかるよというのもダメ。

 正解はね、面白いから、それだけのこと。ネコがネズミを追いかけるのと同じこと。万人に面白くないのは嗜好の違い。肉好きだったり魚好きだったりと同じこと。確かにこれも分かりやすいし、他にもいろいろ説明はできるけど、根本はこれ、面白いから。「やったぜ!」に行くまでの過程も、たとえ「やったぜ!」とならなくても、面白いから。

 と、新年から愚にもつかない底の浅いことを…。