レスト中

 阿弥陀岳で遭難して救助された東京の登山者がコロナ疑いありで、結局救助隊の10人程が2日間自宅待機となってしまった。大きく報道されたのでご存じかと。登山自粛が言われているGW入口でのことなのでこれは参ったね。

 山や岩で絶対安全はあり得ない。それはそう、クルマの運転と同じ。もっと言えば階段や散歩だっていつコケるとも限らない。ただ散歩でコケたのと岩場で事故ったのでは世間の風当たりがリスさんとゾウさんぐらい違う。生半可な覚悟で今は岩場に行けない。死にそうになってもどんなに痛くても救助は求めない、病院にも行かない、仲間が怪我したら穴掘って埋めて帰るぐらいのつもりじゃないとね。

 考えるべきことは2つあって、ひとつは今そこまでして山や岩に行く内的動機は何なのか? よく言われるように山や岩は逃げない。自分だけ行けないワケじゃないし、ちょっと指痛めりゃ2,3か月登れないのもよくあること。あえて世間に逆らって、人様の目を盗んで、今まさに行くのは登るのが好きだから、ただそれだけ? それ以上何も理屈はないの? 世間に向けての理屈じゃなくて、自らを客体化して正当化できるかの問題。

 ふたつ目に考えるべきはこの大情況をどうとらえるか? 自分の都合じゃなくて、社会はどうあるべきかという大上段に振りかざしてのこと。もし事故ったら医療機関に負荷をかけてしまうと、みんなが同じことを言っている。いま山に行くのは違法じゃないが言語道断・無知蒙昧・極悪非道。口をそろえて同じことを言う。こういう風潮は歴史的に見て少々アヤシイ。「絆」や「節電」が口先ばかりの嘘八百だったことは今はよく分かる。

 そうは言ってもやっぱり山も岩もしばらくは行かない。登りません、コロナに勝つまでは。 G3