お手本

 年数だけは長いことクライミングやっているもので、上手いクライマーや強いクライマーの登りを見る機会は幾度かあった。それらは漠然とではあるけどイメージとして頭に焼き付いており、自分の登りにとても大きな影響を与えている。もちろん傍から見れば、どこがっ! となるだろうし、事実そのお手本とは似ても似つかない登り方をしていることは十分に承知しております、ハイ。

 しかし、かつて見たそのお手本をも凌駕する、これがクライミングだなんだよという、素晴らしい登りを間近に見る機会を幸運にも得てしまった。クライミングはね、足で登るのだよ、足が大事なんだよとは知っているし、かつてのお手本からもそのことを教えられていたつもりだった。が、こんな登りは今まで見たことない。ホントに足で登ってる。

 もちろん間近で見たからといってマネなどできない。非凡な才能の上に長年の修練を積み重ねた結果なのだろう。マネはできないけど、漠然としたイメージだけは頭の中に沁み込ませた。それが少しでも良いから、百分の一でも、千分の一でもあの登りに近づける成果となればうれしいのだけど。まあ、無理だろうなあ。目の保養をしただけでも良しとするか。