花の命

 先週と同じ岩場同じエリアの小川山姉岩へ。人気の妹岩、マラ岩を通り過ぎてわざわざやって来るにはちょっとマイナーなんだろうね、他のグループはいない。これといったルートがない。でもお手頃ルートが並び、居心地も良く、打ちのめされずに気持ちよく帰れる。打ちのめされるかヤッタぜかの勝負クライミングだけではなくて、これも一つの楽しみ方と思う。

 このエリアには松本龍雄氏の「古希のよろこび」という3ピッチのルートがある。あの一ノ倉沢の、あの「初登攀行」の松本龍雄、だと思う。華々しく活躍していたのは50年代で、そのあと70歳まで登っていたことになる。80歳を過ぎてさすがに今は岩場には出ないけど、ジムに通って5.11に取付いているというような記事をどこかで読んだのが、確か松本龍雄氏だったと思う。

 終わりかけのサラサドウダンは人間でいえば何歳になるのだろう。植物はもちろん何年も何十年も生き続けて、花は植物にとって目的ではなく種を残し増やすための手段に過ぎないのだから、花を擬人化して何歳はおかしい。でも先週はあんなにきれいだったのに今日は茶色にくすんで足元を埋め尽くす花びらを見ると、つい老いて死んでゆく過程に見えてしまう。

 80歳過ぎてイレブンに取付ければ文句はない。じゃあ70歳ならどうだ、というのはあまり意味なさそう。歳の問題ではなくて、それぞれのレベルや環境に応じて自分のクライミングが出来ればよい。歳のせいにしたくはないけど年齢が関係ないとはいかない。でも歳のせいにしてしまえば登れるモノも登れなくなる。

 なんだか堂々巡りでどうなんだか。要するに自分の歳を感じざるを得ない時期だということかな。何歳が自分のピークかは後でわかること。ピークを過ぎたと自覚しても登り続けるモチベーションを持ち続けられればあとは環境次第。それがまたクライミングの良いところだね。 (G3)