有笠遠征

 往復で5,6時間かけてはるばる出かけて行った甲斐はあったと思う。そこそこの成果もあったし、一方でヤラれた感も十分あったけど、まあ、岩場というものはそういうもんだよね。事故なく戻って来て、成果にほくそ笑み、ヤラれた感をモチベーションとして蓄えられればそれで良し。

 何といっても快晴の新緑に包まれて居心地の良い岩場でボノボノしているだけで贅沢なのに、さらにその上にクライミングとは‼ 世界中にはあらゆる不幸が満ち満ちているのに、自分たちだけこんなイイ思いしていてホントに良いんだろうかと後ろめたささえ感じてしまう。もちろん良いに決まってる。当然じゃないか。人それぞれ幸福追求の道は違うけど、クライマーのハシクレとして言わせてもらえば、これ以上の何かがあるとは思えない。

 岩vs自分の勝負でありながら岩は敵ではなく、敬意を払いながら登らせていただく対象である。登れた時の達成感は岩に勝った、ではなく自分に勝ったという達成感。しかもそれで終わりではなく、また次のルートが誘惑する。ヘボが言うのもおこがましいけど、仮に日本中の難ルートを登りつくしたとしても世界には果てしなく難ルートが存在している。つまり無限に楽しめる。G3のように歳でヨレてきても、それはそれで幾らでも挑むべき課題はある。 (G3)